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東谷慶太
(ひがしたに・けいた) |
和歌山大学卒業、大阪教育大学専攻科修了。ホルンを西田末勝氏に師事、野田篁一氏の指導を受ける。関西フィルハーモニー管弦楽団、京都市交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、大阪センチュリー交響楽団、大阪市音楽団等に客演するほか、スタジオプレーヤーとしてスタジオUSENやCD、ビデオ、テレビコマーシャルのレコーディングに携わる。
1995年別府湾ジャズフェスティバルに参加、以後ジャズホルン奏者として活動。1993年、第2回川西市民オペラにおいて新作「時の流れを超えて〜モ−ツァルト編〜」で指揮者としてデビュー。1997年、Japan
Brass Collectionに参加。1999年 ギタリスト 大西ノリフミ 氏とJazz&Popsグループを結成、大阪梅田、伊丹を中心にライブ活動を行なう。2001年、4ホルンを中心にしたジャズ・ポップスグループPOP
CORNESを結成。現在、Japan Brass Collectionメンバー、POP CORNES 主宰。
使用楽器:アレキサンダー 403S(GP)
使用マウスピース:パックスマン PHC 25(カップ)+バック 3(リム) |
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国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。 |
─まず、どんな経緯でホルンを始められたのですか。 |
ホルンは和歌山大学の大学オケに入って始めました。僕を引っ張ってくれたのが、今回のコンサートもプロデュースをして下さっている今来さんという方なのですが……。 |
─大学からホルンを始めてプロになられたというのは、珍しいケースですね。 |
もともとクラシックが好きではあったんですよ。高校時代はサッカー部で、疲れて家に帰ってはモーツァルトとストラヴィンスキーを聴いていましたから(笑)。だから「ホルンは面白い」ということは知っていました。
それで大学のオーケストラに入って「ホルンをやりなさい」と言われて。ただ、ラッキーだったのは、一からプロの先生に教えてもらったことです。それが当時大阪フィルハーモニー交響楽団にいらっしゃった西田(末勝)先生です。
僕はホルンは初めてでしたが、ピアノは少し習っていましたし、中学時代にトロンボーンを少しだけやったことがありました。それで「楽器は最初から習わんとあかん」という意識があって、当時の先輩が習っていた西田先生のところに行きました。楽器もいきなりホルトンを親に買ってもらって――浪人しなかったからまあいいか、ということで――先生のところにその楽器をまだ袋に入った状態で持って行って、持ち方から教えていただきました。
本当に厳しい先生で、最初に話した今来さんという先輩が怒られているのを見ながら、「お前は2階に行ってろ」と言われて夏の間中一人でロングトーンをしていました。そのまま忘れられて外出されてしまったこともありましたね(笑)。 |
─どのあたりで、専門的に勉強したいと思うようになったのですか。 |
僕は教育学部で専攻は数学でしたが、途中で同じ教育学部の音楽科に転向しました。ホルンの先生はいなかったのですが、室内楽とか、音楽の理論などはしっかりと勉強させてもらいました。
結局大学は7年かかって卒業して、その後どうしようかと考えていたときに、東京藝大の守山(光三)先生が西田先生の同級生だということで勧められて、受けてみようという気になっていました。でも西田先生が当時非常勤をされていた大阪教育大学専攻科の試験が先にありまして、受けてみたら合格してしまった。だったら東京まで行かなくていいか(笑)と思ってそちらに行くことにしました。
西田先生は大フィルの演奏会が終わってからも学校に戻ってきて、「レッスンだ!」と始まり、飯を食って先生のお宅に行ってお茶を出して布団を敷いて、次の日の朝起こされて、とそんな生活でした。まあ、内弟子ですよね(笑)。専攻科というのは1年間なのですが、その間毎日レッスンでしたから、ものすごく密度が濃かったと思います。 |
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─ポップスやジャズなどに深く関わるようになったのはいつごろからですか。 |
卒業して最初の10年間ほどはクラシック・プレーヤーとして活動していました。リサイタルも7回開きました。小品を中心に、フルーティストや歌手などのゲストを毎回呼んでいましたね。最後のリサイタルでは、前半にブラームスのトリオを演奏して、後半はジャズトリオ+サックス+ホルンでジャズをやりましたが、これは大恥をかきましたね。何もできなくて。何事もやってみないと始まらないということもよくわかり、良い勉強になりました。
もともとジャズとかポップスも好きでしたから、そういうジャンルの仕事もしてみたかったんです。そんなときに「スーパーシンフォニックバンド」というホルンの2本入ったビッグバンドに参加する機会があって、そこでアレンジャーの田中克彦さんに出会いました。
僕も好きで吹いていましたから、そこで知り合った方々にも可愛がっていただき、田中先生がスタジオの仕事に使ってくれるようになりました。そういうところからつながりが広がっていって、ポップスやジャズの世界に入るようになりました。それがだいたい15年くらい前です。 そして今も一緒にやっているギターの大西ノリフミさんと出会いました。大西さんは当時から凄い人だったのに、僕は無謀にも「一緒にライブしてくれませんか」とお願いしたのですが、「いいよ」と。それで1999年の8月に、伊丹のSTAGEというジャズ喫茶でホルンとギター2人でのライブを行ないました。場所は変わっていますが、ここから始まったワンホーンの“KEITA
BAND”のシリーズは今も続いていて、すでに30回を迎えました。
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─ホルンとギターでどんなことをやったのですか。 |
ビートルズとか、ボサノバとか、とにかく僕が好きな曲を、2人で打ち合わせしながら作っていったという感じですね。もちろん、そんな編成の譜面なんてありませんでしたから。ちなみに今のKEITA
BANDはそれにベースとドラムが入る4人編成になっています。
今度5月21日に大阪ザ・フェニックスホールで演奏会を開く“POP
CORNES(ポップコーン)”もほぼ同じメンバー(+ピアノ)で、ホルンが4人という編成です。
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─そのポップコーンはかなり興味をそそられますが、結成のきっかけは? |
ビリー・メイ・オーケストラというビッグバンドがあるのですが、そこに私の憧れるヴィンス・デ・ローザというホルン奏者が参加しています。サックスの代わりにホルンが3本か4本くらい入っていて、そのサウンドが本当に素晴らしいんです。それから、ヘンリー・マンシーニのオーケストラでもヴィンス・デ・ローザがホルンを吹いています。『酒と薔薇の日々』という60年代のアメリカ映画がありますが、あの冒頭のソロを吹いているのが彼です。
そのサウンドのイメージをずっと持っていまして、「僕が思っていることをこの人ならわかってくれる」というカンで声をかけたのが今のメンバー――大阪センチュリー交響楽団の向井(和久)君、望月(正樹)君、関西フィルの松田(信洋)君――です。うちに集まってビリー・メイ・オーケストラやヘンリー・マンシーニなどを聴いてもらったら、「素晴らしい!」と。彼らの中にも眠っている部分があったのですね。
それで2001年にザ・フェニックス・ホールに企画書をとにかく出してみたら決まってしまった。それから田中先生に曲を依頼して、全てが動き出しました。その後ライブハウスとかイベントなどで演奏したり、ドルチェ楽器さんで演奏させてもらったり。
ですから、最初のきっかけからしても、ポップコーンの最終形はホルンが4本入ったビッグバンドというか、シンフォニック・ジャズ・オーケストラ――まあ、ジャズに限定するわけではありませんが――に行きたいと思っています。 |
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─ところで、ホルンと言えばやはりクラシック中心の人が多いと思うのですが、譜面があるビッグバンドならまだしも、ほとんど譜面がないコンボジャズはどうすればいいのか、想像もつかない人が大部分だと思います。どうやって勉強されたのですか。 |
やはり実際にやってみることしかないですね。現場でセッションを繰り返していると、例えばアドリブからメロに戻る瞬間とか、バッキングで入るポイントとか、メロディーをもう1回繰り返すのか、それともハーフで終わるのか、そういうことがあらかじめ約束していなくてもわかるようになるんです。
最初あれほどわからなかったのに、わかるようになってくるんですよ。でもそれは楽曲全体をきちんと把握できて初めてわかるものなんです。例えばエンディングで「1コーラスやるのは長い」な、とか「1回だとちょっと短いな」というのも、曲の構造を理解していれば皆がほぼ同じ認識になりますから、そう思ったら勝手に行ってしまっても皆ついて来ます。
クラシックでも同じだと思うんです。「曲の構造がこうなっているから、ここのリタルダンドはこれだけ必要だ」という必然性が見えてくるんです。部分部分を見ていてもだめなんですよ。
僕は指揮もしますが、ジャズをやるようになって音楽に対する考え方が変わりましたね。管楽器をやっているとどうしてもわかりやすく振ることを重視してしまいがちなのですが、「その曲の持つ本質はなんや」ということを考えるようになりました。細かいところは演奏者がやればいい。指揮は自分の想いと曲の本質をオケが受け取って演奏する、その補助ができるといい、そんなことを考えています。ある意味、セッションですね。
同じ意味で、ホルンは好きですけれども、音楽をやる上では越えなければならない部分があるのかなと思います。
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─ホルンで吹くということにはこだわりつつ、同時にホルンに拘泥しない? |
まあ見ての通り楽器に対するこだわりはありますが、それを表に出すのは好きではないです。もちろん、ホルンが最もホルンらしい良さを出せるのは4本が束になったときだと思うんです。だからポップコーンというものがあるのですが、でも「ホルン吹きがホルンを聴きに来る」のではなく、クラシックファンだけでもなく、ホルンを知らない人にも聴いてもらって「ああ、ホルンて良い楽器だな」と思ってもらえるといいなと考えています。曲もジャズあり、ポップスあり、スクリーンミュージックあり、ボサノバあり、ひょっとするとクラシックもあり。今までにない感覚を出して行けたらいいですね。
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─さて、楽器のことをあまり表に出したくないと言われましたが、そのゴールドプレートの403Sについてお話を伺わないわけにはいきませんね(笑)。 |
アレキサンダーを使ったのはこの楽器の前の200からです。オリジナルのアレキサンダー200周年モデルの中古。8年ほど前です。それまではメーニッヒのダブルとシングルを使っていましたが、偶然ドルチェ楽器で吹いてみたらすごく吹きやすかったし、音程などの違和感もない。しかもゴールドプレートで輝いていたし、クランツに彫刻がしてあって綺麗やな、と(笑)。その日のうちに欲しくなりました。
もともと抵抗のポイントが遠く、息がすっと入っていく感じが好きだったので200は良かったのですが、それでも自分のイメージとしては少し軽かった。イエローブラスということもあったのかもしれません。それまで吹いていたのがメーニッヒの赤でしたから。
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─403Sに変えたのは? |
403Sが発売される前、アレキサンダーの社長がドルチェ楽器に来て、開発中の楽器ということで403Sのゴールドブラスを持ってきました。それを吹いた瞬間にものすごい気に入りました。
でも「まだそれではあかん、ゴールドブラスに金メッキをかけたら絶対に良いはずだ」と。常識的にはゴールドブラスに金メッキはないらしいんですけれどね。しかも、それにフルクランツを付けてもらって、「ポイントは遠く音色はダークにしてください」という注文を出したんです。アレキサンダーにダークというのも変な話なんですが、「アレキサンダーでダーク」ということこそが良いと思ってね。
2002年の春に注文して2003年の1月14日に届きましたが、吹いた瞬間にイメージ通りだとわかりました。ただ、楽器がなかなか言うことを聞いてくれない。楽器の主張があって、こちらのやりたいことと喧嘩するんです。だからこそ、アレキサンダーは機械ではなく生き物だと思いました。仲良くなるのに2年くらいかかりましたが、今は楽器と対話ができて、言うことも聞いてくれるようになりました。それからは、録音などで自分が「ヤバい」と思ったときに、楽器が支えてくれる。そういうことのできる楽器というのが面白い、まさに「楽器が生きている」と感じますね。 |
─しかし、吹奏感とか音色に対する注文をきちんと聞いてくれたんですね。 |
特注したのは初めてですが、「何でも言ってみるもんや」と思いましたね。その通りできるかどうかはともかくとして、言ってみないと伝わりませんから。希望を伝えて、「あとは職人さんにお任せしますよ」というのが、良い楽器を作ってもらう秘訣だと、僕は思います。
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─最後に、これからやってみたいと考えていることはありますか。 |
今まで僕は人に教えるということをしていなかったのですが、「自分の考えていることを人に伝えたいな」と、あるときふっと思ったんです。本当にここ最近のことですが、自分のホームページでも「レッスンします」ということを公言しましたし、ドルチェ楽器さんのホームページでも告知をしていただいています。
プロ奏者のアプローチとアマチュア奏者のアプローチは違っていいと思っているんです。サウンドや演奏スタイルなど、あくまで自分の好みで突き進んで行って良いわけですから、楽器の機能面からのアプローチではなく、楽曲からのアプローチを大切にするべきだと思います。できるだけ基礎練習は少なくして、音楽を楽しむことを目標に設定したうまいやり方を伝えられるのではないかな、と思っています。
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東谷さんらしいのが、楽器用のマイクを常備しているところ。これは愛用しているCOUNTRYMANというメーカーのマイクで、しかもこの位置が最も良いということを確認済みだとか。 |
─趣味は? |
1つには料理ですかね。今日はプリンを作ってお土産に持ってきました。手間をかけないでおいしいものを作るのがいいですね。趣味というよりも、家庭では僕が料理の係ですから。忙しいときでも、弁当を作って家内に持たせたりしますよ。
自分でも録音とかライブのときなど、皆の分の弁当を作って行きますよ。音楽に集中できる環境を作りたいし、単純に、食べた人に「おいしい」と言ってもらえるのが嬉しいということもあります。 |
─休みの日はどんなことをされていますか。 |
犬が2匹いますので、犬と遊んで、料理を仕込んで……。でも休みとは言っても、ライブで次に何をしようか考えたり、譜面を書いたり、仕事のようなそうでないようなことをしていることも多いですね。 |
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(取材協力:ドルチェ楽器) |
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■POP
CORNES コンサート! |
日時 |
2008年5月21日(水) 19:00開演 |
場所 |
ザ・フェニックスホール(大阪市) |
出演 |
東谷慶太、向井和久、松田信洋、望月正樹(以上、ホルン)、
大西ノリフミ(ギター)、安次嶺悟(ピアノ)、喜多健博(エレクトリックベース)、浅川ジュン(ドラム)、ハービー・トンプソン(ゲストシンガー) |
曲目 |
Can't take my eyes
of you/Brass Men's Holiday/The Days of Wine
and Roses/Medley of George Gershwin/The Henry
Mancini Collection/Candy/他 |
入場料 |
(前売り)4,000円 (当日)4,500円 |
お問い合わせ |
ドルチェ楽器 TEL 06-6377-1117
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■東谷慶太
ファーストアルバム発売! |
東谷慶太/POP CORNE |
曲目 |
Take Me There/Love
Dance/Sanbou...Sanbou/Last Dance//Alfie/Candy |
演奏 |
東谷慶太(ホルン)、大西ノリフミ(ギター)、喜多健博(エレクトリックベース)、浅川ジュン(ドラム) |
発売 |
5月21日 |
価格 |
1,500円 |
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当コーナーの情報はそれぞれ掲載時のものです。
プロフィール等変更となっている場合がございますので予めご了承下さい。 |
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