アレキサンダーファン
2007年11月掲載
プロフィール
菅野猛(かんの・たけし) 菅野猛
(かんの・たけし)
国立音大卒業。1977〜1985年、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。その間、テレビドラマ、映画音楽などのスタジオワーク、室内楽を行ない、またシティ・フィルとのコンチェルトの共演などを果たす。1985年、札幌交響楽団に入団。1989年、ミュンヘン国際ホルンシンポジウムに参加。
使用楽器:アレキサンダー 1103MB
使用マウスピース:ティルツ マックウィリアム1
第27回 プレーヤーズ
菅野猛 インタビュー

国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。

─1103をお使いなんですね。
札幌交響楽団(札響)のホルンはどちらかと言うとイギリス系の太い音色で、楽器もパックスマンが主流でした。僕も最初パックスマンを貸してもらって、良かったら使おうかとも思っていたのですが、長く103を吹いていたので、そこからどうしても離れられませんでした。
大学時代は学校の103を借りていて、卒業してから一時期クノッフを使っていましたがやはり103に戻りました。僕にとってのアレキサンダーは体の一部のようにしっくりとくるんです。
でも、札響ではアレキサンダーは少数派で、しかも103は意外に少ない。例えば僕と折笠さんはアレキサンダーでも1103ですし、島方さんはアレキサンダーとヤマハを吹き分けているようです。
菅野猛


─ということは、札響に入られてから、103から1103にスイッチしたということですか。
ええ。札響では、僕はずっと2番を吹いていて、最近はときどき4番も吹きます。下を吹くときには、1103の持つストレート感が良いんですよ。下の倍音がたっぷりあるので。特に下吹きのための楽器というわけではないのですが、より息が入るという印象ですね。1103は使い始めて15年たちますが、本当に気に入っていますよ。根本的にはアレキサンダーで、いろいろな表情を作りやすいのです。実に器が大きくて上品な楽器だと思います。


─103と1103の違いはどんなところにあると思われますか。
菅野猛 音色的には、103はホールの中で客席までよく通る音ですが、1103の場合は少し柔らかめで、太く聞こえます。だから上の人に合わせやすいし、音色が太い分、器が大きいというのか、大らかに包み込むような感じがありますよね。だから下吹きが1103を使うとサウンドが豊かになるような気がします。
でも根本的には103が好きなんですけれど(笑)。


─いつごろから「下吹き」なんですか。
札響の前は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(東京シティ・フィル)にいたのですが、そのときはトップ吹きでした。楽器も103で。その後札響に入ってから、下吹きをしています。
実は、東京シティ・フィル時代の、あるときからずっと下吹きになりたかったんです。その方が性格に合っているような気がしてきて。
そのきっかけになったのは、僕の師匠である千葉馨先生がNHK交響楽団を引退された後、東京シティ・フィルでベートーヴェンの交響曲第7番を演るときに客演として呼んだことがありました。そのときに「千葉先生の下をぜひ吹きたい」と、頼んで2ndを吹かせてもらったんです。そうしたら「下吹きって面白い!」と感じて。その頃から「下吹きというのは素敵なポジションだな」と思うようになりました。
菅野猛


─それで下吹きとして札響に入られた?

最近のオーケストラは、最初からパート指定か、上吹きか下吹きということで募集しますが、当時は違っていました。
札響に入ろうと思ったのは、故郷である札幌に戻りたいという希望があってのことでしたが、ちょうどホルン奏者を1人募集していたのでオーディションを受けました。でもオーディションのときは上のパートでしたね(笑)。入ってから当時トップだった窪田さんに「俺の下を吹いてくれ」と言われて。



─ところで、ホルンを始められたのはいつからですか。
ホルンは高校から始めました。中学のときはずっと運動部でしたが、中学3年生のときに水泳部と吹奏楽部が新しくできました。僕はそれまでも音楽が大好きで、小学生の頃からずっとビートルズが好きで、ギターを手作りしたこともあったほどでした。
それで、楽器をきちんとやりたいと思って吹奏楽部に入部しようと思っていたら希望者が多くて、なんとペーパーテストがあり、それで落ちてしまいました。
結局高校で吹奏楽部に入って、最初からホルンを希望しました。映画音楽などでホルンの音は知っていて、それを吹いてみたいと。ちょうど他に誰もホルンをやりたいという人がいなかったので(笑)、希望通りホルンを吹くことができました。


─やりたくて始めた楽器だけに、みるみる上達したのではないですか。
ホルン

はい(笑)。高校2年生のときに北海道の管楽器個人コンクールでモーツァルトの「ロンド」を吹いて、いきなり2位に入ってしまったんですよ。それで気を良くしてしまって(笑)音大に行こうと決意しました。



─卒業してから東京シティ・フィルに入団した。

故郷に帰る前に、東京のオケでトップを吹きたかったんです。そこで7年くらい経った後、北海道に戻って札響に入団しました。それから、かれこれ24年も札響にいることになりますね。



─オーケストラ以外の活動としては?

金管アンサンブルが好きで、札響のメンバーと金管5重奏を組んでいます。名前は「札響ブラスアンサンブル」とか適当に付けているのですが(笑)、演奏会などもしょっちゅうやっています。大学の頃から、木管アンサンブルよりも金管アンサンブルが好きですね。あと、飲んだときでもどこでも、リクエストがあれば吹きます(笑)。特にオケに関係ない飲み会のときに。それが重要だと思うんですよ。ホルンを知らない人に「ホルンてこんな音だよ」と聴いてもらう。それで気に入ってくれたら演奏会に来てくれればいいなと。



─師匠である千葉馨氏はもちろんでしょうが、それ以外で影響を受けたホルン奏者はいますか。
菅野猛
(ゲルト)ザイフェルトですね。ノンヴィブラートのくせのない吹き方で、素直でスピード感があって。
もともと高校生のときにザイフェルトの「モーツァルト/ホルン協奏曲集」のレコードを聴いて、「ああ、このホルンは好きだ!」とほれ込み、それからザイフェルトのアンサンブルのレコードを買いまくりました。大学生の頃にベルリン八重奏団で来日しときには、もう「おっかけ」状態ですよ。
とにかくずっとザイフェルトのサウンドは頭にありましたね。直接習ったことはありませんが、共演はすることができました。札響で彼がベルリンフィルの4人でシューマンの「コンツェルトシュトゥック」を吹いたときに、オケのホルンを吹きました。そのあとR.シュトラウスの「アルプス交響曲」ではその4人が5〜8番ホルンに回って、ワーグナーテューバ持ち替えで吹いたことは忘れられません。


─今後、やりたいこと思っていることはありますか。

まず、ホルンの演奏が未完成なので……。「こういう音を出したい」という理想はいつも頭にあって、一度でいいからその通りに吹いてみたいなと思いますね。
もう一つは、若い世代を育てていけるといいですね。日本から世界に上手なホルン吹きが出ることに、少しでも力になれればと思っています。




一問一答コーナー

─どんな音楽をよく聴かれますか?
ビートルズがずっと好きで、今でもギターは弾きますし、バンドを組んでベースを弾いたりもしています。ビートルズばかりやっているバンドで、ライブもしました。
もともとビートルズが好きで、その後高校に入ってクラシックをよく聴くようになり、一時期はクラシックしか聴かなかったのですが、一巡りしてビートルズに戻ってきた感じですね。今はスガシカオとか山崎まさよしも弾いたりしています。

─音楽以外の趣味は?
料理はよくしますね。自分が食べたい物を自分で作ります。
それから、今集中しているのは体を鍛えること。2年半ほど前から、ジムで体を鍛えています。以前は何か「毎日毎日疲れ果てている」という感じで、これでは「ホルンを長く吹けないな」と思って始めました。そうすると、考え方ががらっと変わりましたね。非常にポジティブになります。
楽器を演奏する上でも、まず体力が続くようになるし、精神的にも、プレッシャーに負けずに向かって行けるようになります。それで定年とかも関係なく、ずっとホルンを吹いていたいと思っています。
Column コラム アレキサンダーホルンフェアin札幌
 菅野氏が在籍する札幌交響楽団のホームグラウンドである札幌コンサートホールKitaraは緑が菖蒲池の水面に美しく映える中島公園の中にあるが、(インタビューもそこで行なった)、その中島公園のすぐそばにヤマハミュージック北海道 札幌店がある。取材前に立ち寄ったところ、耳寄り情報をGet! 
 11月17日(土)、18日(日)の2日間、「アレキサンダーホルンフェア」が開催される。それに先立って横浜で開催された2007楽器フェアでの展示同様に、普段は見られないようなアレキサンダーホルンが店内に展示され、同時に試奏会も催される。また、アレキサンダーの輸入元であるヤマハミュージックトレーディング株式会社(当時)の技術者によるホルン無料点検会も予定されているから、自分のホルンを持参して点検してもらい、そしてアレキサンダーホルンを試奏するチャンスだ!
お問い合わせ先: TEL 011-512-6124(代表)

ヤマハミュージック北海道 札幌店 ヤマハミュージック北海道 札幌店

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