▼シンフォニア・ホルニステンは福岡、京都、東京、仙台と日本各地で活躍するメンバーで構成されるホルンアンサンブルであり、西日本を中心に各地で演奏活動を行なってきた。『ホルンメッセ』は3枚目のアルバムであり、ホルン三重奏・四重奏・五重奏を織り交ぜたプログラムが収録されている。
▼デュッセルドルフにあるライン・ドイツ歌劇場のホルン奏者でもあるギュンター・シュノックによる《5つのホルンのための古い民謡による楽しいソナタ》は、そのタイトル通り、ドイツ民謡のメロディがホルンらしい耳馴染みの良いオーケストレーションで演奏される。序曲〈愛の勝利〉は勇壮さの感じられるルネサンス風の曲。変奏曲〈私の全ての考え〉はゆったりとしたメロディが徐々にテクニカルに変容していく様が面白い。終曲〈愛は大いなる喜びをもたらす〉は行進曲風に盛り上がる。個人的にも、ぜひ一度挑戦してみたいと感じた。
▼シンフォニア・ホルニステンは全員がアレキサンダー103を使用しており、ブリリアントで張りのあるサウンドと息の合った厚いハーモニーが魅力的だ。また、CD用にこぎれいにまとまらず、思い切りの良さも感じられる生き生きとした演奏・録音であることも聴いていて楽しい。
▼デイヴィッド・ウーバーはアメリカの作曲家。《3つのホルンのための組曲》は1983年の作品だが、ハーモニー感のはっきりした明快な曲調を持つ。トリオだがスケール感の大きな演奏が印象的。モーツァルトの《ディヴェルティメントK.439b 第2番》も三重奏で、元々3本のバセットホルンのために書かれたもの。モーツァルトらしい美しいメロディが楽しめる。小手先だけの表現ではなく、フレーズを大きく捉えて歌っている演奏が心地良い。
▼ロシアの作曲家アレクサンドル・ミトゥーシンの《ホルン四重奏のための小協奏曲》は近年人気が高まっている曲だ。憂いを含んだロマンティックなメロディがあるときはソリスティックに、あるときは迫力のあるトゥッティで奏される。テクニック的な見せどころもあり、華やかで聴きばえのする曲だが、シンフォニア・ホルニステンの演奏では内に秘めたような感情も豊かに表現されている。
▼アントン・リヒターはメンデルスゾーンやシューマンと同年代の音楽家で、《4つの狩猟ホルンのための6つの小品》はすでに登場していたバルブ付ホルンを効果的に使いつつ、伝統的な狩りの音楽を描いている。その約120年後に作曲されたパウル・ヒンデミットの《4本のホルンのためのソナタ》はホルンという楽器の特性を十全に生かしつつ、同時に楽器へのこだわりによる制限を感じない深い音楽性を持たせた名曲。特に変奏曲である第3楽章には様々な「仕掛け」がほどこしてあり、演奏している方はそれがわかって楽しいのだが、聴き手に伝えるのは難しいことも多い。しかしさすがシンフォニア・ホルニステンの演奏は全曲にわたって曲の持つ音楽性を明確に伝えてくれるし、ドライブ感もあって引き込まれる。何より、聴いていてワクワクする。
▼ウィーン・フィルのホルン奏者でもあったカール・シュティーグラーによる《5つのホルンのための聖フーベルト・ミサ》はホルンアンサンブルのファンなら一度は耳にしたことがあるだろう。音色とハーモニーが大きな魅力のシンフォニア・ホルニステンとは非常に相性が良く、その豊かな響きを存分に堪能することができる。 |