アレキサンダーファン
2008年01月掲載
ホルンなんでも盤版Bang! 〜ライブラリー〜 「ホルンなんでも盤版Bang!」
ホルン関係のCD・楽譜情報を発信していきます!!


このコーナーでは、ホルンに関するディスクをご紹介いたします。
みんな知っている超定盤、「こんなのあったのか」という珍盤など、ホルンが活躍するものなら何でも。その中から今回はこの2枚です。
ここでご紹介する盤は基本的には筆者のライブラリーですので、当サイトへの、入手方法などに関するお問い合わせはご遠慮くださるよう、お願い申し上げます。


盤版Bang!ライブラリー021

Opera!
ベルリン・フィル 8人のホルン奏者たち
(サラ・ウィリス、ラデク・バボラーク、シュテファン・ドール、ノルベルト・ハウプトマン、シュテファン・ドゥ・ルヴァル・イェジエルスキ、ゲオルク・シュレッケンベルガー、ファーガス・マックウィリアム、クラウス・ヴァレンドルフ)
Opera!
1〜6. ウェーバー(ヴァレンドルフ編)/「魔弾の射手」より
7. フンパーディンク(ストランスキー編)/「ヘンゼルとグレーテル」ファンタジー
8. ヴェルディ(ストランスキー編)/「椿姫」前奏曲
9. ワーグナー(ユーリセン編)/「トリスタンとイゾルデ」ファンタジー
10〜13. ビゼー(ターナー編)/「カルメン」組曲
14〜15. バーンスタイン(コヴァレヴィツ編)/「ウェストサイド物語」
フォンテック FOCD9320

▼ベルリンフィル8人のホルン奏者によるアンサンブルCD。輸入盤がすでに発売されおり各所で話題になっていたが、1月21日にフォンテックより国内盤が発売になった。そのタイトルどおり「オペラ」をテーマにしたプログラムだが、さすが世界一流のホルン奏者たちによるアンサンブル、超絶技巧と歌心がとんでもなく高い次元で両立している。
▼「アレキサンダーファン」をご愛読して下さっている皆様ならご存じと思うが、ベルリンフィルのホルンセクションは全員がアレキサンダーの楽器を使っている。このCDの録音でもヴァレンドルフが1103、他の7人が103 を吹く。音を聴くと、同じ楽器を使っていても音色の個性がしっかりとわかるが、その上で音がよくハモり、トゥッティでは輝かしくも力強い例のアレキサンダートーンに圧倒される。
▼編曲はメンバーであるヴァレンドルフ、ウィーンフィルのストランスキー、そしてアメリカンホルンカルテットのターナーなど世界的なホルニストが行なっているだけあって、ホルンの能力をフルに使う譜面になっている。しかしそれをアクロバティックと感じさせず、楽々と吹きこなしてるのはさすがと言うしかない。また、オペラの中の有名アリアを演っておしまい、ではなく様々な名場面が登場するので非常に聴き応えがある。
▼『魔弾の射手』はまず序曲で始まるのだが、何よりも耳を引くのが(というより耳を疑うのが)超パワフルな低音だ。曲ごとのパート割りは書かれていないが、その音色と録音風景の写真から、8番ホルンは紅一点のサラ・ウィリスだろう。それにしても、103という楽器は本当にあんな太い低音が出るものなのだろうか。全国のサラ・ファンの皆さん、彼女のサウンドを存分に堪能してください(すみません、個人的嗜好を出し過ぎました)。
▼もちろん、バボラークとドールのツートップのメロディも泣かせる音色で聴かせてくれる。どちらがどの曲を吹いているのかはっきり表記されていないのが残念なところだ。音色からなんとなく想像はできるけれど……。それに増して、内声部が充実するとアンサンブルはこれだけ面白い、ということが改めて実感できる。アレンジも凝っていて、『魔弾の射手』2曲目「花嫁付添の乙女たちの合唱」にはなぜかシューベルトの「ます」の旋律が現れたり(多分似ていたからお遊びで入れたのだろう)、お馴染みの「狩人の合唱」もよくある単純なアレンジではなく、オペラに準じた編曲なので新鮮。それにしても最後の辺りは何かトンでもないことになっています。
▼『ウエストサイド物語』の「クラップキ警部」ではメンバーが歌手も務めており、とても楽しいアンコールとなっている(サラの声も聴けます!)。しかし歌詞はヘンテコな内容に変えられているらしい(ライナーをご参照ください)。
▼……と思ったら、その後に、さらに楽しいオマケが入っていた。このCDのNG集とも言うべきもので、録音の楽しい雰囲気がよくわかる。「彼らもこんなミスをするのか」と親しみが湧いたり、でもハイトーンを上に外すとかちょっと信じられないミスの仕方があったり。その後のアドリブ(?)やツッコミも愉快だ。ドイツ語が分かると10倍楽しいのだろうが……。彼らの生の声が聴けるのも貴重。
▼と、全収録時間70分以上、これでもかと楽しませてくれるCD。はっきり言って買わなきゃ損だと思います。


盤版Bang!ライブラリー022

シューマン/4本のホルンと大オーケストラのためのコンツェルトシュトゥック 他
バレンボイム指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(ソロホルン:シュテファン・ドール、デイル・クレヴェンジャー、イグナシオ・ガルシア、ゲオルク・シュレッケンベルガー)
シューマン/4本のホルンと大オーケストラのためのコンツェルトシュトゥック 他
1〜5. ベートーヴェン/交響曲第8番
6〜8. シューマン/4本のホルンと大オーケストラのためのコンツェルトシュトゥック
9. リスト/交響詩「前奏曲」
10. ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」から「ワルキューレの騎行」
GENEON GNBC4114

▼今月は、時代は違うがもう一枚、ベルリンフィルのホルンを堪能できるディスク。ベルリンフィルをバックにドールとクレヴェンジャーが共演する「コンツェルトシュトゥック」のDVD。よく知られたディスクだが、値下げになって再発売されたので改めてご紹介したい。
▼収録は1998年、ベルリン国立歌劇場にて。「コンツェルトシュトゥック」でソロの1番を吹いているドールはベルリンフィルの首席奏者となって5年目の頃(若い!)。バボラークはまだベルリンフィルにいない。2番を吹いているクレヴェンジャーは1966年以来今に至るまで(!)シカゴ交響楽団の首席奏者にある名手だ。この、ベルリンフィルのメンバーとクレヴェンジャーが共にソロを吹くという姿は他では見ることができない。
▼ちなみに、この時代からベルリンフィルのメンバーの楽器はアレキサンダー103が主流だが、ドールはこの難曲を吹くに当たって ヤマハのトリプルホルンを使用している。しかしどんな音でも(最高音はなんとハイA。ハイFは普通に出てくる)軽々と吹いているし、まったく安定している。しかも超ハイトーンに至るまでホルンらしい伸びやかな音色であり、極めてロマンティックな曲調ともぴったりと合っていて、思わず引き込まれてしまう。
▼ライナーにも書かれているが、この曲をパート譜通りに正直に演奏しようとすると特に1番にかかる負担がとてつもなく大きいため、うまくパートを入れ替えて演奏している。例えば1、2番が演奏する部分を2、3番や3、4番に振り分けたり、1番の代わりに2番が吹いたり、ときには1番と2番でパートを入れ替えているようにも見える(つまりは、クレヴェンジャーがすごく“仕事”をしているということ?)。
▼それにしても、演奏スタイルや音色はかなり異なっているように思われるドールとクレヴェンジャーが見事なアンサンブルとハーモニーを見せているのは、さすが2人とも現代を代表するホルン奏者だけのことはある。それだけでなく、ソロの4人全員の息が合っており、ドルチェで歌う部分にはうっとりしてしまうし、トゥッティのフォルティシモでは 思わず「カッコイイ」と叫びたいくらい。
▼ベルリンフィルも、現在の一世代前のスタープレーヤーが多数在籍している時代であり、シューマンを含めてどの曲を取っても素晴らしい熱演である。また、アンコールの「ワルキューレの騎行」では「コンツェルトシュトゥック」のソロを吹いた4人がスタンドプレイでメロディを吹く(今度はクレヴェンジャーが1番)。彼らを加えて8人のホルンが咆哮するのもなかなかの見物だ。

アレキサンダーファン編集部:今泉晃一



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