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阿部 雅人 |
福島県出身。東京芸術大学音楽学部卒業。在学中に東京フィルハーモニー交響楽団に入団。
ホルンを永沢康彦、大野良雄、守山光三、千葉馨の各氏に、室内楽を山本正治、中川良平の各氏に師事。
東京文化会館推薦音楽会出演。96年に福岡、97年に福島でリサイタルを開く。
現在、新日本フィルハーモニー交響楽団団員。東京ホルンクラブメンバー、東京ミュージック&メディアアーツ尚美講師、日本ホルン協会事務局長。
アレキサンダーホルンアンサンブルジャパンメンバー。 |
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皆さんこんにちは。また一ヶ月経ってしまいましたね。
一ヶ月というは長いようで短いですな!
皆さんの夏休みはいかがでしたか?
僕の夏休みはというと、残念ながらまだ取れていません。。。
なんだかんだで休めなかったですね。でも、ある大学の合宿で志賀高原に一週間行っていましたから、少しは息抜きにはなったかな?
涼しかったですよ!20度くらい。
今度はゆっくり旅行で行ってみたいですね!
さて今月は演奏する時のとっておきのコツを伝授いたしましょう!
それは何かと申しますと〜
ピッチの合わせ方です。
皆さんはどうやってピッチを合わせていますか?
実はこの音程合わせほどやっかいなものはないんですね。
誰でも経験あると思います。チューナーとにらめっこしたことが。
で、どうでした?チューナーと仲良くなって隣の人とも音程合いましたか?
結論から言って、音程というのは、どんなにチューナーでぴったりでもダメなんですね。
なぜなら音程は生き物のように、どんどん変化していくからです。
その瞬間々々で一番気持ちのいいピッチを探していくしかないのです。
これがピアノやオルガンと合わせる場合はまた違ってきます。なぜなら奴らは同じ音程しか出せませんから、常にこちらが合わせていくしかありません。
このように、どんな楽器と一緒にプレイするかでピッチの作り方も変わってくるので、一概に言えないところにピッチの難しさがあります。
ここでは、オーケストラや隣のホルンと、どうしたらそれらしく聴こえるか?ということに絞って話しましょう。
まず一番最初に言えること。
それは良い音で吹く!ということです。
これは良い音とはなんぞや?にもよりますが、少なくとも良い音だな!と皆が感じられたら、それだけでオーケストラの仲間は合わせてくれる可能性がある、ということですね。
当然、オケ全体のピッチからあまりにも外れていたら誰も良い音だ!とは思わないでしょうから、ある程度の音程の良さも良い音の定義には含まれますね。
しかし、本当の意味で素晴らしく説得力のある音がホルンからきこえてきたら、音楽的センス(これが大事なんです)のある人ならその音を無視しては演奏出来ないと思いますよ。
これは、今までの奏法の話に大いに関係があります。言葉を変えれば、奏法というのは、説得力のある音を出すためにある、と言ってもいいかもしれません。合い易い音を出すため、と言ってもいい。
いつも上ずっている音や、か弱い音しか出ないのでは、とても説得力があり、合い易い音とは言えないですからね!
どうですか?音程というのはピッチだけではないのですよ。仮に、ピッチが正しくても、音が良くなかったら誰も見向きもしてくれないでしょう。
ピッチというのは皆で認め合って作られていくものなのです。
また、音の大きさにも左右されます。
ホルンでDuetしていたとします。一人はとても大きく、もう一人は聴こえないくらいで演奏しました。良い音程で聴こえたでしょうか?
答えは否です。
これは単純な例ですが、オケ中で、4人が良いバランスで吹くことが、意外に難しいのです。
これは並び方にも影響されますが、一般に前後に二人ずつの並びだと、2ndと3rdはお互いに聴きにくく、バランスを取るのが難しいし聴きにくい。
また横一列に並んだ場合、4thは1stの音が聴こえにくくなりバランスを取り難いといった問題が起こり易いのです。
出なくても良い音がでしゃばっていたり、反対に必要な音が弱かったりすると、とたんに和音は崩れるのです。これは、第三者に聴いてもらえば、より客観的に判断できます。
支えるべき音を担当する人が、支えられない音だった場合…もうお分かりですね。ここにも奏法の問題が出てきます。
賢明な読者はもうお分かりと思いますが、音には、周りと合い易い音と、合い難い音があるということです。また、大きく聴こえる音もあればそうじゃない音もある。同じピッチでも、高く聴こえる音もあれば低く感じる音もある。
ピッチの問題より、こちらの問題のほうが実際には多いと思います。
音、バランスに問題ない場合、後は本当にピッチになってきます。
楽器や奏法が変わると、ピッチも分からなくなったりすることは良くあります。
その日の調子にも左右されますね。これは皆さん経験あると思います。
特に自分では判断できにくいのがピッチです。自分で判断できなかったら、出来るだけ信頼できる人に聴いてもらいましょう。
そしてホルンに特徴的なのが、ベルが後ろを向いていることです。どうしても自分の音をベルから直接聴いてしまいがちです。
僕は出来るだけベルからの音で判断するのではなく、ホール(練習会場)に響いている音で判断するようにしています。自分の音を、あたかも遠くで聴くように感じる、とでも言いますか。
これは、ちょっとした意識を変えることで割りと出来ることです。
調子が悪くなったり、緊張したりと、状態が悪くなればなるほど、意識は自分の内面に近くなりがちです。
出来るだけお客様(聴いている人)の立場になって判断するようにしましょう。
「自分でそう吹いているつもり」と、「向こうにそう聴こえるように吹く」では、吹き方は全く違ってきますからね。
これはピッチに限らず、リズムやダイナミクスでもそう言えます。
しかし、ピッチを合わす本当の切り札は、助け合い譲り合いの精神と言ってもいいかもしれません。もし、全員が助け合いの精神を持って演奏できたら…今までのピッチの問題の大半は解決するかもしれませんね。
お互いに半分ずつ歩み寄れば、合う時間も労力も半分で済むでしょう?
自分のピッチが正しい、などと思うから問題が大きくなるのです。
もちろん全てを相手に合わせてばかりでは全体のピッチも安定しません。
しかし、場面に応じて合わせてあげる、くらいの心のゆとりが欲しいものですね。
仲間とうまくやっていくのも、いい演奏をするのも一緒ですよ。
そのように心がけていれば、必ずや音楽もピッチも良くなると、僕は信じています。
それではまた来月! |
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