アレキサンダーファン
2006年09月掲載
ホルンなんでも盤版Bang! 〜ライブラリー〜 「ホルンなんでも盤版Bang!」
ホルン関係のCD・楽譜情報を発信していきます!!


このコーナーでは、ホルンに関するディスクをご紹介いたします。
みんな知っている超定盤、「こんなのあったのか」という珍盤など、ホルンが活躍するものなら何でも。その中から今回はこの2枚です。
ここでご紹介する盤は基本的には筆者のライブラリーですので、当サイトへの、入手方法などに関するお問い合わせはご遠慮くださるよう、お願い申し上げます。


盤版Bang!ライブラリー007

「インヴェンション〜無伴奏ホルン作品集」
ラデク・バボラーク
「インゲンション〜無伴奏ホルン作品集」 ラデク・バボラーク
1〜12. ブラウン/無伴奏ホルンのための12の前奏曲
13〜17. バルボトゥ/独奏ホルンのための5つの詩的な小品
18〜20. クジヴィンカ/独奏ホルンのための3つのコンポジション
21〜24. バレロ=カステルス/ザロの墓地の3つのバラ
25. クロル/ラウダーツィオ
26〜28. フラッケンポール/独奏ホルンのための3つの楽章
29. アーノルド/ホルンのための幻想曲 作品88
オクタヴィア・レコード CRYSTON OVCC-00027

▼前回ご紹介したシュテファン・ドールと並ぶベルリン・フィルの首席ホルン奏者、バボラークによる無伴奏ソロ曲集。以前にはバッハの無伴奏チェロ組曲の第1番〜3番を収録したアルバムがあるが、今回はすべて20世紀後半の、一部を除けばあまり著名ではない作曲家の無伴奏曲を集めている。しかも、取り上げた作曲家7人全員の生まれ育った国が違うというのも面白いポイントだ。
▼無伴奏というだけで「曲」として聴くかせるための難度は高い。しかもどれも演奏技術を要する曲ばかり。しかしライナーノートによれば、バボラークにとってこれらの曲は「超絶技巧」ではなく「メロディアス」な曲だそうだ。しかし、聴いてみれば確かに納得。バボラークの故郷であるチェコ特有の柔らかな音色と、どんな技巧的な曲でも鼻歌でも歌うかのように朗々と吹いてしまう完璧なテクニックを存分に味わうことができる。楽器はもちろんアレキサンダー103。
▼例えば、ブラウンの曲はエチュードっぽい雰囲気があるが、一見無造作に並んだような音符も、バボラークが吹くと立派なメロディーになってしまう。ただのテクニックではなく、曲を完全に自分のものとし、その中の一つ一つの音符の役割まで把握しているからこそできるワザだろう。
▼「フランスの詩を音楽に置き換えた」というバルボトゥの曲は、フォークソング風、ミステリアス、教会風、コミカル、壮大とドラマチックなほど曲調がバラエティに富み、初めて聴いてもとても面白く聴ける。特にゲシュトップやフラッターなどの特殊技術を織り交ぜながらコミカルな雰囲気を聴かせる4曲目と、爽やかな高原で自由に吹いているような雰囲気と伸びやかなバボラークの音色がマッチする5曲目には注目。
▼クジヴィンカは断片が即興曲のように様々に、そして自由に発展していく。下手な奏者が吹いたら散漫なだけだろうが、バボラークが吹くと「次はどうなるのだろう」とつい気を張り詰めて聴いてしまう。
▼バレロ=カステルスは吹奏楽でも人気の高い作曲家だが、無伴奏でもドラマのある展開で、主人公の波乱に満ちた人生を描いた小説のそれぞれのシーンをイメージしながら聴けるのが楽しい。曲調に合わせてバボラークが微妙に音色を変えているのも聴きどころ。
ちなみにこの曲、98年にトゥーロン国際コンクール・ホルン部門の課題曲に採用されている。
▼フラッケンポールのアメリカらしい陽気さは、このアルバムの中でも際立っている。ライナーノートにも書かれているが、第3楽章はモーツァルトのロンドのパロディーとさえ取れる。特に冒頭のテーマに戻る部分がソレっぽくて、思わずにやっとしてしまった。
▼ちなみにこのディスクはスーパーオーディオ(SA)CDとのハイブリッドディスクとなっており、通常のCDプレーヤーで再生できるが、SACD対応のプレーヤーで再生すればさらに生演奏に近い音で聴いたり、サラウンドではまるでホールにいるかのような臨場感を得ることができる。


盤版Bang!ライブラリー008

LEIPZIGER HORNQUARTETT
LEIPZIGER HORNQUARTETT
1〜5. ケッツィア/4本のホルンのための「サンク・ヌーヴェル」
6〜11. ボザ/4本のホルンのための組曲
12〜16. ヒダス/4本のホルンのための室内楽
17〜19. ヒンデミット/4本のホルンのためのソナタ
20〜23. ティペット/4本のホルンのためのソナタ
APRICCIO 10 898

▼ライプツィヒ・ホルンカルテット(以下LHQと略す)はドイツ・ライプツィヒの中部ドイツ放送交響楽団のメンバーによるホルン4重奏団で、本アルバムは2001年に制作されたもの。取り上げられているのはどれも20世紀後半に書かれたホルン4重奏曲で、すでにスタンダードとなった曲や、これからスタンダードとなるであろう曲ばかりだ。
▼そういう曲を演奏したCDって、「上手いんだけれど面白くない」という演奏が多々あるが、LHQは違う。力いっぱい吹いている(音量が大きい、という意味ではない。まあ、音量は大きいと思うけれど)のがよくわかり、気持ちが入っていて「完璧な出来のライブの演奏をそのままCDにした」ような印象。
▼カルテットは4人の個性の違いを楽しむという聴き方もあるが、LHQは4人のニュアンスや音色が揃っていて、しかも全員が文句なく上手い。使用楽器は不明だが、ライナーの裏には103の写真が載っていた。
▼ケッツィア(いろいろな読み方があるが)も、この演奏はとにかくカッコイイ。3曲目の早いパッセージがパシッと決まるところや、4曲目で低音を鳴らしまくる様など、聴いていて胸がすく思いだ。
▼ボザはもはや定番曲だが、この演奏は新鮮な気持ちで聴ける。例えばちょっと捉えどころのない1曲目も情感たっぷりに吹いていて、彼らが吹いているのを聴くと「捉えどころ」がしっかりわかる。なかなか「ファンファーレ」っぽく吹けない最後の曲が、見事に輝かしいファンファーレとして曲を締めている。それにしても、4番を吹いているミハエル・ギューネという人、凄すぎる。下吹きはぜひ目標としたいものだ。
▼ハンガリーのヒダスの曲は、個人的にイチオシ。作曲年代が1981年と新しいだけに音符と音符の関係が複雑だが、演奏して楽しい、聴いて楽しい曲になっている。譜面づらがそれほど難しそうに見えず、聴いていてもそれほど難しく聞こえない、でもきちんと演奏するのは難しいというやっかいな曲だが、LHQはさすが。特に終曲の変奏曲は見事と言うしかない。聞き終えて思わずBravo! と叫びそうになる。
▼ヒンデミットは、よくよく楽譜を読むとすごく面白そうな仕掛けがたくさんあるのだが、どうもツボがないというか、小難しい印象ばかり残りがちな曲だ。例えば終曲はこれも変奏曲だが、うねうねとミュートで動くフレーズにメロディーの断片が乗っていたり、16分の18と8分の4拍子が同時進行するところとか、LHQの演奏はそういう「仕掛け」をはっきりと見せてくれるので、面白さがしっかりと伝わるのだ。
▼ティペットでも、手に汗握るような構成の曲を、集中力を保ったまま演奏している。
ホルン4重奏をやる人なら(もちろんそうでない人も)一度は聴いておきたい、聴き応え十分すぎるアルバムだ。

アレキサンダーファン編集部 (今)



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