アレキサンダーファン
2006年08月掲載
プロフィール
脇本周治(わきもとしゅうじ) 脇本周治
(わきもとしゅうじ)
東京芸術大学卒業。ベルリン芸術大学卒業。山本真、F.ブラーデル、千葉馨、G.ザイフェルトの各氏に師事。1982年からベルリンドイツオペラの契約団員を2年間務める。現在、神奈川フィルハーモニー管弦楽団ホルン奏者。アマデウスクインテットのメンバー。国立音楽院講師。
第22回 プレーヤーズ
脇本周治インタビュー

国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。

─現在の主な活動としては?
やはりメインは神奈川フィルハーモニー管弦楽団ですね。すでに20年以上在籍しています。それからオーボエの市原満氏が中心になっている木管5重奏のアマデウスクインテット。こちらは「気の合った仲間と演奏すること」が楽しいです。
それから、大学や社会人のアマチュアオーケストラとか高校・中学の吹奏楽などを指導する機会が多いですね。ホルンのセクション練習はもちろん金管、管楽器全体のトレーナーとして行っています。もともと音大に通っている間は「指導者になりたい」という願望もありましたので、こちらも自分としては非常に楽しんでやっています。


─アマチュア奏者の指導というのは特にどんなところが楽しいですか。
終わった後の飲み会(笑)……というのは半分冗談としても。
教えている時の自分のアドバイスとその結果としての上手くなる過程というものがフィードバックされて、私自身が演奏するときの財産としてだんだん増えていく、というのも良い点ですね。


─どういうことを重視して教えますか。
脇本周治(わきもとしゅうじ)
例えば今やっている曲を即効的に上手く吹く方法というのはありますが、後々につながっていかない。むしろ「どう練習していけば上手くなるか」というアドバイスをするのが私の仕事だと思っています。
将来的にずっと永くホルンを吹いていけるようになってもらうことが目標ですね。
たまたま2001年に「バンドジャーナル」誌に1年間、ホルンの「ワンポイント・レッスン」を連載したのですが、おかげでそれまでいろいろと考えてきたことを項目ごとに整理できました。
それは今でもレッスンに役立っています。そうやって基礎練習のやり方をきちんと知っておけば、「曲のこの部分はあの基礎練習を応用すればいい」ということがわかり、自分で先に進めるようになります。


─その内容を見る方法はありませんか。
譜面などは一応ホームページ(http://www6.ocn.ne.jp/~shu-w/)で紹介してはあるんですが、何年も更新していませんで……。手元に材料としてはかなりたまっているのですが。


─さて、活動の中心はやはり神奈川フィルハーモニー管弦楽団(神奈フィル)だと思うのですが、どんなオーケストラだと思いますか。
歴史のあるオケに比べればまだ発展途上ですが、私が約20年いるうちにどんどん上手くなっています。例えばヨーロッパの老舗のオーケストラなどは、四分音符一つ取っても「うちはこう吹く」というのが決まっていますが、そういうのがない分、いろいろな音楽とか指揮者の要求に対して柔軟に対応できるのだと思います。
私がオーケストラにいる最大の理由は、シンフォニーはもちろん、オペラやバレエ、ポップスなどいろいろな音楽ができるということです。いろいろなことをやれるのが楽しいです。「交響楽団」ではなく、「フィルハーモニー管弦楽団」と称しているのはそういう意味だと思っています。


─ところで、ホルンを始めたのは?
脇本周治(わきもとしゅうじ)
中学の時に吹奏楽部に入って、です。その理由は、中学に野球部がなかったからです。それでテニス部にしようかな、と思っていたら仲良くしていた友達に、「僕は吹奏楽部でホルンをやるから、一緒に入ろうよ」と言われて。
彼がかなりのクラシック好きだということを全然知らなかったので驚きましたが、一緒に入部することにして、たまたまホルン――最初はメロフォンでしたが――を吹くことになって、それでハマりましたね。
その友人の家でレコードを聴きまくって、「運命」「新世界」から入ってまずクラシックが好きになった。そういうシンフォニーって、ホルンが格好いいじゃないですか。それでホルンも好きになりました。


─芸大を卒業した後、しばらくドイツにいらっしゃったそうですが。
大学時代、来日した外国のオーケストラが芸大の近くの東京文化会館で演奏会をしていましたので、よく聴きに行きました。
当時は、今よりもオケのカラーというものが強かったですし、流儀も様々でした。特にホルンは国によって、オケによって音色が違いました。
その度に自分がどこを目指せばいいのかわからなくなるほどでしたが、最初に大学で習った先生がドイツ人だったこともあって、ドイツ・オーストリアの方に自分の軸足を置こうかなと思うようになったのです。


─ドイツに留学することを決めた直接のきっかけはどんなことですか。
当時私が感じていた、アンブシュアの問題が解決できるかな、という思いがありまして、ザイフェルト氏が来日したときに、ホテルでレッスンをしていただきました。それがきっかけで、ドイツに行ってザイフェルト氏に付くことができたのです。なかなか空きがないですから、すごく運が良かったんですね。
後で聞いた話ですが、私が「ここが問題点」と思っていたこととザイフェルト氏が「ここを直そう」と思っていたことが同じだったそうです。ドイツに行って最初のレッスンのときに、「君、アンブシュア変えるから」と言われ、長年の問題点に対する解決策が示されて、もうその一回のレッスンで日本に帰ってもいい、くらいの気持ちでしたね。
ザイフェルトという人は本当に観察力が鋭いんだなあとつくづく思いました。


─ベルリン芸術大学を卒業されてからベルリンドイツオペラに入られたんですか。
在学中からです。しかしオペラは大変でした。一度ステージに乗った演目は、リハーサルをやらないんですよ。だから私のように新しく入った人間は、リハーサルなしで本番に臨まないといけない。
私は2番だったのでまだよかったですが、首席で入った若手などは、降り番の日でも燕尾服を着てピットに入って勉強していましたからね。


─今はどんな楽器を使われていますか。
103GBです。ゴールドブラスでラッカーなし。もう一本は107GBLです。
どちらもゴールドブラスですが、特にゴールドが好きというわけではなくて、その時良いものを選んだらたまたまゴールドブラスだったんです。
そもそも、「ドイツに留学するなら、やっぱりアレキサンダーを吹かないとだめかな」と思って使い始めました。最初は大学の古い103を借りて、ですが。


─アレキサンダーの魅力は何だと思いますか。
脇本周治(わきもとしゅうじ)
やはり音色でしょうね。音圧があるとか、ホールで吹いたときに音源がはっきりわかるとかいろいろありますが、なんといっても声とすごく合うんですよ。ドイツでオペラをやっていたときも、周りはアレキサンダーが主流でした。

ドイツでオペラをやっている間は103、101、200、107、503、1103、90といろいろな楽器を購入したので、よくマインツのアレキサンダーに通っていました。
いまだにベルは7〜8枚持っていますよ。いちょう取りのベルから、イエロー、ゴールドのラッカーあり/なし、あとクランツが付いているものとか。ないのはニッケルシルバーくらいです。
今使っている楽器は20年前のものですが、ベルは新しいものです。
クランツ付きのベルは、コープラッシュなどのエチュードとか吹く時に使っています。きつくてきつくて、いい練習になりますよ。気分は「巨人の星」です(笑)。


─マニアックな楽しみですね(笑)。
楽器ではいろいろと遊んでいます。例えばレバーもストリングアクションが好きなので、103用のパーツを注文して替えてみたりとか。最近は元に戻していますが。
あとはB♭シングルに付けるナチュラルF管がありますが、それに加えて各バルブ用の抜き差し管を作ってもらって、差し替えることでFシングルにできるという楽器も持っていました。今は手放してしまいましたが、やはりシングル管というのはダブルホルンと鳴りが違うので、煮詰まったときのリハビリにいいんですよ。
まあ確かに、マニアックな話ですけれどね(笑)。




一問一答コーナー

─中学で野球部に入りたかったというお話でしたが、最近はスポーツは?
水泳は毎日やっています。とにかく時間を見つけて泳ぎに行って、1日2500mは泳いでいます。遅いから時間がかかるんですけれどね。

─オフの日は何をされていますか。
いわゆる「オフの日」がないんですよ。空いていると何か仕事を入れてしまうので。
ただ考えてみると、毎日2時間半はフィットネスクラブにいるんですね。それがオフといえばオフかもしれません。

─将来の夢などありましたら。
アマチュアオーケストラを教えに行くと飲むのが楽しみだと言いましたが、卒業して地方にいる元弟子たちを頼って全国を飲み歩くという老後を過ごすのが、夢といえば夢です(笑)。
 
(ヤマハミュージック横浜店にて)

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