アレキサンダーファン
2006年08月掲載
プロフィール
阿部雅人 阿部 雅人
福島県出身。東京芸術大学音楽学部卒業。在学中に東京フィルハーモニー交響楽団に入団。
ホルンを永沢康彦、大野良雄、守山光三、千葉馨の各氏に、室内楽を山本正治、中川良平の各氏に師事。
東京文化会館推薦音楽会出演。96年に福岡、97年に福島でリサイタルを開く。
現在、新日本フィルハーモニー交響楽団団員。東京ホルンクラブメンバー、東京ミュージック&メディアアーツ尚美講師、日本ホルン協会事務局長。
アレキサンダーホルンアンサンブルジャパンメンバー。
第10回 達人の息吹


皆さんこんにちは。
夏休み真っ只中ですね。でも、学生って本当に恵まれていますよ!1ヶ月以上休みがあるなんてね!
今もし自分に1ヶ月も休みがもらえたら…考えただけでよだれが出てきそうです。
休みがある…それが今、自分にとって一番贅沢なことに思えます。
心身ともリフレッシュしないと、ホルンだって吹いても面白くないはず。
心の奥から音楽を奏でてみたい!そう思う健康な気持ちを持ち続けられるのは、あなたが心身ともに充実している証拠です。
休むときは休んで、やる気を充電しましょう!

さあ、それでは今月も行きますよ!

先月は喉の近所の話でした。
喉をリラックスして吹いてみましたか?アンブシュアを色々考えるより、即効性があったんじゃないかと思います。

喉に力を入れないでうまく開けられた時の音の変わりようは、誰でも感動するくらい違うと思います。アンブシュアなどどうでも良いのではないか、とすら思えるくらいです。実際に、かのモーリス・アンドレも、「テクニックはいらない。呼吸のテクニックがいるだけだ」と言っているくらいですからね。

どうしてもアンブシュア近辺に意識が行ってしまいがちですが、息をどう出すかというのは、非常に大事です。
特に、緊張したとき!にとても大事ですね。

意識して、自分の感覚を口からもっと体の奥深くにすることにより緊張は和らぎます。

緊張するときは、誰でも肩や唇の、体の表面に近いところを意識しやすくなりますよね?それを意識して外すということです。
もちろん緊張するのは、他の要因(自信がないとか持って生まれた性格)があるのですが、少しでも和らげる方法として有効ですよ。

それから、先月号では触れなかったのですが、アタックのことについて少し書きたいと思います。

よく、きれいなアタックにするにはどうしたら良いでしょう?という質問を受けるのですが、もちろんアタックとは舌をついて行なう事なので、舌の問題と思われる方が多いかもしれませんが、唇がその音を出せる状態になっていないのに、無理に音を出そうとしてアタックがうまく行ってない事がほとんどなのです。
しかし、舌の使い方の問題もあります。

多い問題としては、アタックをはっきりさせようとして、舌に力を入れ過ぎて硬く冷たい音になっていることですね。

舌に力を入れて、舌先を硬くしてタンギングをしてはいけないと思います(もちろん意図的にそうする場合もありますが)。
出来るだけ余分な力を抜いて、Tuではなく、Du、もしくはNuという発音に近くしてみて下さい。
どうですか?そうすると、舌の先がとがらずに広い面積でアタックできるようになりませんか?柔らかく、奥行きのある音色になりませんでしたか?
話はちょっとそれますが、sfzと楽譜に書いてある時に、無条件で舌つきだけを強く硬くする人が多いのです。そうすることによって、硬く薄い音になってしまうのですが、アタックは通常通りで、息をたくさん入れてあげたほうがsfzらしく演奏できる事が多いのです。
アクセントやsfzは、特別な場合を除いて、舌つきの強さではなく、息の量や出し方で表現すると思ってください。
また、早く連続するタンギングを、楽器を吹かないで口だけでしてみてください。先を硬くしたTuよりも、DuやNuの方がずっと早く滑らかに舌が動きませんか?

音楽的にどういったアタックをしたら適切かを考えるのも良い方法ですね。場合によっては舌先を硬くしたアタックが必要な時もあるでしょう。でも、通常はリラックスしてアタックしたほうが結果が良いと思います。

舌の脱力は、喉の状態と非常に関係しています。アンブシュアだけではなく、それを支える喉、舌の状態にも気配りしましょう。
口の中は自分で見ることが出来ないので意識しにくいのです。

今までずっとアンブシュア的には、いかにうまく閉じられた(締めるのではありませんよ!)アパチュアを作るのが大事だ、という話をしてきましたが、口の中は、アパチュアを閉じても充分な響きを作れるように空間を確保する。というのが良い音を生み出すコツではないかと思っています。
まあ、それ以上に大事なのは、いい音のイメージを持つことですが…

ここでもやはり、全てのバランスというのがキーポイントになりますね。空間を確保するといっても、口内を広くしすぎたらピッチはぶら下がり、暗い響きになってしまうでしょうし、アンブシュアが緩み過ぎたり、締め上げ過ぎたら?…もうお分かりですよね。
ホルンの豊かな響きを出そうとして、口内を広くし過ぎると、もしかすると音域によっては一見豊かな響き(ボーボーな音?)になるでしょうが、そのまま吹くと、高音域がきつくなりアンブシュアを締めなければ出ないために、出ても硬い響きになるか、弱々しい音になる事が多いようです。ここがホルンを吹く上で誤解を招きやすい場所ですね。
もちろん例外はありますよ!ちゃんと吹ければ何も問題は無いと考えて良いでしょう。

また、歯の間隔(口内)が広い時と狭い時では、舌つきのしやすさも変わってくると思います。
これも、どれくらいの間隔にすれば舌つきがしやすいのか、是非一度自分で研究してみてください。意外に新しい発見があると思います。

全音域に渡って(ある程度ですが)吹きやすくアタックもしやすいポジションを見つけて下さいね。

後は楽しく吹くのみ!
誰でもこんな難しい事を考えながらなかなか吹けるものではありません。

でも、色々な事を考えながら練習して、少しでも吹きやすくなったと思えた時。きっとあなたはホルンを吹くのが、こんなに楽しかったんだと実感していることでしょう!僕もそうであったように。

それではまた来月。


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