アレキサンダーファン
2006年08月掲載
ホルンなんでも盤版Bang! 〜ライブラリー〜 「ホルンなんでも盤版Bang!」
ホルン関係のCD・楽譜情報を発信していきます!!


このコーナーでは、ホルンに関するディスクをご紹介いたします。
みんな知っている超定盤、「こんなのあったのか」という珍盤など、ホルンが活躍するものなら何でも。その中から今回はこの2枚です。
ここでご紹介する盤は基本的には筆者のライブラリーですので、当サイトへの、入手方法などに関するお問い合わせはご遠慮くださるよう、お願い申し上げます。


盤版Bang!ライブラリー005

「F & R.シュトラウス:ホルンとピアノのための音楽」
シュテファン・ドール(ホルン)
「F & R.シュトラウス:ホルンとピアノのための音楽」シュテファン・ドール(ホルン) [フランツ・シュトラウス]
1. シューベルトの「あこがれのワルツ」による幻想曲 作品2
2. 告別(ロマンス)
3. 独創的幻想曲 作品6
4. ノクターン 作品7
5. 海辺での感慨(ロマンス) 作品12
6. 主題と変奏 作品13
7. 無言歌
[リヒャルト・シュトラウス]
8. 序奏、主題と変奏
9. アンダンテ
CAMPANELLA Musica(輸入:カメラータ・トウキョウ)
CAMP-8012

▼シュテファン・ドールはご存知ベルリン・フィルの首席ホルン奏者を1993年から務めている。本作はリヒャルト・シュトラウスとその父のフランツ・シュトラウスのホルン・ソロ作品を収めたアルバム。
父フランツ・シュトラウスは著名なホルン奏者であり、ホルンのための曲も残しているが、このCDにはピアノ伴奏付の独奏ホルン曲がすべて収録されている。
▼ドールのホルンはベルリン・フィルで吹くのとはまた一味違ったサウンドを聴かせる。わずかにビブラートのかかった、輝かしくも柔らかで色気のある音色。テクニックもさすがで、低音から高音まで、音域やダイナミクスに関係なく、自分の意思どおりに自由自在にホルンを吹きこなしている印象。かなり鳴らしている部分もあるが、それが軽々と感じられるのはすごい。
▼1曲目の「シューベルトの『あこがれのワルツ』による幻想曲」では憂いを帯びた曲調がドールの音色ととてもマッチしている。フランツ・シュトラウスの曲全般に言えることだが、馴染みやすいメロディーのところどころに速いパッセージや音の跳躍があり、さりげなくテクニックを要求される。それを本当にさりげなく吹いている。吹き込んでいっても音が荒くならずにますます魅力を増す「アレキサンダートーン」も健在。
▼「ノクターン」は比較的演奏される機会の多い曲だが、改めて「こんな素敵な曲だったのか」と思えるような演奏。「ノクターン」というイメージに収まらない表現のダイナミックさが印象的だった。
▼「主題と変奏」では、お得意のロマン的なテーマが自由闊達に変奏されていく。徐々に技巧的になっていく変奏をドールが自在に演奏していくのも聴きどころ。
しかしこうして聴いてみると、自身が優れたホルン奏者だったフランツ・シュトラウスだけに、「ホルンがホルンらしく歌える」魅力ある曲ばかりであることに改めて気づかされる。
▼フランツの息子であり説明不要の作曲家リヒャルト・シュトラウスによるピアノ伴奏のホルン曲は2曲収録されている。
「序奏、主題と変奏」は伝統的な形式ではあるが、お父さんの曲をお手本として(またはイメージして)書かれたのであろう。曲の雰囲気も近いものがあるが、こちらは格段に現代的で、高度な技術が要求される。なんとリヒャルト・シュトラウス13歳のときの作曲。演奏者もお父さんを想定していたのか、とんでもない難曲となっており、ライナーによればシュトラウス自身、後に改訂を考えたほどらしい。
しかしドールもフランツに負けず、この「若さゆえの無茶な曲」を自分の声で歌うように吹き切っている。
▼最後の「アンダンテ」はホルンソナタのひとつの楽章として書かれたが、ソナタそのものは未完に終わっているそうだ。「アンダンテ」は中間の緩徐楽章だろうが、異様に充実しており、わずか4分弱ながら聴き応えたっぷり。ないものねだりではあるが、R.シュトラウスのホルンソナタの全曲をぜひ聴いてみたかった!


盤版Bang!ライブラリー006

AMERICAN HORN QUARTET
AMERICAN HORN QUARTET
1. Kerry Turner/Fanfare for Barcs
2〜4. Kerry Turner/Quartet No.1
5〜8. Kerry Turner/Quartet No.2 "Americana"
9〜11. James W. Langley/Quartet for four Horns
12〜19. Lowes E. Shaw/Fripperies
ebs records ebs6008

▼アメリカンホルンカルテットはヨーロッパで活動するアメリカ出身のホルン奏者により1982念に結成されたホルン四重奏団。本作はすでにCDが数枚リリースされている同カルテットの最初のアルバム。
▼ここでは、やはりケリー・ターナーの存在は大きい。カルテットのメンバーであると同時に、ホルン吹きの琴線に触れる曲を数多く作曲しており、本アルバムもターナーによるオリジナル曲が第一にフィーチャーされている。ターナーは13歳で作曲を始め、翌年には賞を取るなど早くから作曲家としての才能を現すが、その後ホルンに専念することを決意。再び作曲を始めたのはここ10年くらいのことだそうだ。
▼と、ターナーに話題が集まりがちだが、アメリカンホルンカルテットは全員が超一流のホルン奏者であることが、CDを聴けばわかる。さらに4人の音色や個性の違いも聴きどころとなる。
▼1曲目「バルクスのためのファンファーレ」の「バルクス」とは第4回国際フィリップ・ジョーンズ・ブラス室内楽コンペティションの行なわれたハンガリーの地名。冒頭から変拍子を多用しながらも、誰が聴いても「カッコイイ」と思えるファンファーレだ。
▼ホルン四重奏曲の第1番は民謡調の親しみやすいメロディーから始まり、発展していく。とにかくカッコよく、聴き映えがする。とくに日本人が聴いてもすんなり入り込める妙なキャッチーさがあるのだ。
速いパッセージ、広い音域、ゲシュトップなど様々なテクニックを要求されるが、ホルンをよく知っている(もちろんこの曲も自分で演奏している)ターナーだけに無駄に難しいわけではなく、いろいろな要素が極めて効果的に使われている。
2楽章では美しいベルトーンに牧歌調のメロディーが乗るが、後半では1stが口笛でメロディーを吹くなどユニークな試みもある。
▼第2番は「アメリカーナ」と題されており、楽章ごとにテーマを持った曲調となっている。ターナーの曲の中でも最も趣向が凝らされており、難易度も最高レベル。
1楽章はウェスタンがテーマになっており、日本人にとっては演歌調にも聞こえる。相変わらずノリが良く、聴いていて楽しい。2楽章は「南北戦争」がテーマであるが、意外に寂寥感を感じるような落ち着いた雰囲気。そこにスネアドラムや「爆発音」が入る。爆発音についてはどうやって音を出すか指定がある(マウスピースに勢いよく息を吹き込み破裂音を出す)が、CDにあるような音はなかなか出せない。いったいどうやっているのか……。
3楽章は一転して超陽気な曲。テーマはホーダウン(牧場の陽気な踊り)。譜面を見ると「さすがにこれは無茶だろう」というパッセージ続出だが、実際に吹いてみると(確かに吹けないが)雰囲気は味わえるように作ってある。まあこれを完璧に演奏してしまうアメリカンホルンカルテットには驚かされるのだが。
▼Langlyはイギリスのホルン奏者で、作風もターナーと共通点を感じさせて、非常に技巧的だが同時に非常にホルンらしく、どこかシリアスながら郷愁をそそるような曲調が魅力的。
▼フリッパリーズはアメリカのローウェル・ショウによる一連のジャズっぽい曲集。全36曲中8曲を演奏。ショウもホルン奏者である。さりげないノリとかちょっとしたお洒落とかの表現が上手く、日本人にはなかなか出せない「軽み」とでもいうようなものを感じさせる曲と演奏だ。

アレキサンダーファン編集部 (今)



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