アレキサンダーファン
2006年04月掲載
プロフィール
吉永雅人(よしなが まさと) 吉永雅人
(よしなが まさと)
東京音楽大学付属高校を経て東京音楽大学卒業。
1985年、高校在学中に第1回全日本管打楽器フェスティバル・ホルン部門において、金賞および特別賞を受賞。同年、第2回日本管打楽器コンクール・ホルン部門で第1位に入賞。森正指揮・新日本フィルハーモニー交響楽団と協演。1986年、東京音楽大学音楽学部器楽科(ホルン専攻)に入学、ホルンを安原正幸氏に師事。1988年、ドイツに渡りワイマールにてペーター・ダム氏に師事。1989年、大学在学中に新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。1994年、アフィニス文化財団の海外研修生に選ばれ1年間ミュンヘン市立リヒャルト・シュトラウス音楽院に留学し、ヨハネス・リツコフスキー氏に師事。
現在は新日本フィルハーモニー交響楽団首席奏者を務める傍ら、ソリスト・室内楽奏者としても活躍。「東京ホルンクラブ」「オイロスアンサンブル」のメンバー。桐朋学園大学、桐朋学園芸術短期大学、東京音楽大学にて講師を務める。
第18回 プレーヤーズ

吉永雅人 インタビュー

国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。

─ホルンを始めたのは?
ホルンは中学からですが、実は私は吹奏楽を経験したことがありません。小学校から千葉で育ちましたが、鼓笛隊ではトランペットを吹いていました。金管楽器のマーチングバンドのような鼓笛隊で、ホルンもありましたが、まるで興味がなくて、単に「カッコよかったから」という理由でトランペットでした。


─そこから吉永さんの楽器歴が始まった。
でもトランペットは1ヶ月くらいで飽きてしまったんです。ずっとメロディーを吹いているというのがどうも性に合わなかったみたいで(笑)。どちらかというとオブリガートを吹いたりする方が好きだということがわかって、小学校6年生のときに念願かなってユーフォニウムに転向することができました。


─でも中学校に吹奏楽がなくて……。
そう。オーケストラがありました。千葉県は学校オーケストラが盛んですからね。
オーケストラにユーフォニウムはありませんね。トランペットは人数がいっぱいで入れなくて、「トランペットを吹けるならホルンも吹けるだろう」とホルンに回されました。「やだなあ」とずっと思っていて。「どうせならトロンボーンがよかったのに」とか。まあ派手好きだったんですね(笑)。
ホルンらしい音はしないし、運指はわからないし、楽譜の読み替えはできないし、苦労しました。


─いつごろからホルンに目覚めたのですか。
中学では一つ上の代の先輩がいなくて、2年生のときには私がトップを吹くことになりました。その中学校はTBS子供音楽コンクールとNHKの全国学校合奏コンクールで毎年全国優勝していたような学校で、その年演奏した曲がウェーバーの『オベロン』序曲。ご存知のようにホルンのどソロで始まる曲ですよ(笑)。
まず千葉県習志野市内の小中学校音楽祭で演奏したのですが、それまで緊張などしたことがなかったのに、なぜか当日ものすごく緊張して急性胃炎で吐きそうになっていました。でも演奏は上手くいって、そのとき初めて、ホルンの音色っていいなあと、自分で思うことができました。
でもこれには続きがあって、まあ結局その年も全国優勝できたのですが、その後市内で凱旋公演のようなものを開いたんですね。そこで思い切りハズして、「ナメたらあかん」ということも身に染みて実感しました。
吉永雅人


─ホルンを本格的に勉強したいなと思ったのもやはり中学校のときですか。
先輩方が受験の話をしているときに、東京音楽大学付属高校というものを初めて知りました。当時音大というものの存在も知りませんでしたし、職業音楽家というものがあるということも知りませんでした。「NHK交響楽団」というのはNHKの職員が趣味でやっていると思っていたくらいですからね。「千葉馨さんも普段は照明さんとかやっているのかなあ、それにしては上手いなあ」なんて(笑)。
中2で自分も進路を考えるときになって、自分の好きなことが生かせる高校ということで、結局東京音大の付属高校を目指しました。行けそうな高校が他になくてね(笑)。
もともと高校に行くつもりもあまりなくて、当時車が好きだったので車の修理工場にでも就職しようかなとか、そんな考えだったのです。


─東京音楽大学在学中に新日本フィルハーモニー交響楽団(以下、新日本フィル)に入団ということは、もうだいぶ長いですね。
いま18年目ですから、確かに長いですね。新日フィルのホルンセクションは日本一ですよ。サウンドはもちろんですが、特にセクションとしてのコミュニケーションがよく取れている。
また、新日フィルは現在すみだトリフォニーホールをフランチャイズとしており、練習もステージで行なっています。だから本番も練習と同じ響きで演奏できるのです。ここが新日本フィルの強みですよね。特にホルンはホールの影響が大きい楽器ですから。ぜひ一度聴きに来てください。


─もう一つの活動の場が東京ホルンクヮルテットですね。
ご存知の方も多いかもしれませんが、91年に結成された日本初のホルン四重奏団です。東京の4つのオーケストラの主席ホルン奏者が集まったということもウリですが、野球でいうとピッチャーを4人集めたみたいなもので、全員上吹きですから下吹きに関してはアマチュアですよ(笑)。最初は「いったい誰が4番を吹くんだ!」と思いましたけれど。


─2005年のニューイヤーコンサートはメンバー一人一人のソロあり、シューマンの「コンチェルトシュトゥック」ありと、とても面白い演奏会でした。
聴いた方々は面白かったと思いますよ。演る方は大変でしたけれど(笑)。4人集まっての練習も、全員違うオケですからスケジュールが合わないのが悩みの種で、一月に1度集まれるかどうか、それも夜中の練習なんてこともよくありました。それでも集まれないときは本番前に合宿をしました。これが結構効くんです。


─もう一つ、オイロス・アンサンブルというのも珍しい編成ですよね。
フルート1本、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンが各2本にコントラバスが入った10重奏が基本です。この編成で活動している団体はそれほど多くないと思いますし、オペラのアリアなどを編曲して演奏する“ハルモニームジーク”というスタイルも採っています。
2月の28日には六本木のライブハウス「スイートベイジル」でライブをやりました。お客さんも食事をしながら聴いていただけるということで、いつものホールでの演奏会とはまた違う雰囲気で楽しく演れました。


─吉永さんが使用されている楽器は?
高校2年生のときから、先生の影響もありもっぱらクルスペを使ってきました。“吉永といえばクルスペ”というイメージが皆さんおありだと思います。“その吉永がなぜ「アレキサンダーファン」に?”と思う方も多いんじゃないですか(笑)。でも、最近はクルスペだけでなく、アレキサンダーも使っているんですよ! まあアレキサンダーに関しては確かに初心者ですが。
楽器というのは僕にとっては洋服みたいなもので、その場面場面に合わせて、演る音楽にもっとも適したものを選んでいるんです。メインの衣装はクルスペだとしても、それにプラスして持っている引き出しが増えた、という感じです。
以前クルスペだけ使っていたときには、クルスペでアレキサンダーみたいな音を出そうとか、いろいろ苦労をして表現の幅を広げようとしておりましたから、引き出しが増えるのは自分としても歓迎です。


─現在お持ちのシルバーの103は珍しい仕様ですね。
イエローブラスにニッケルメッキがかけてあり、その上にラッカーがかけてあります。型番で言うと103MBNPLということになるようです。
この楽器を手に入れたのは2004年の暮れのこと。これが運命的な出会いでした。
実はCDにもなっているマーラーの5番――あれはクルスペで吹いていますが――そのリハーサルの前々日、九州に吹奏楽コンクールの審査員として行っていました。自分の楽器を持って行かなかったのですが、現地で音出しがしたくなり、知り合いの知り合いからたまたま借りたのが、この103です。
これが実にしっくり来たと言うか、実はそれまでも別の103を持っていたのですが全く合わなくてダメだったんです。でもこれは相性がぴったりだった。持ち主はもうほとんど使っていないと聞いていたので、試しにお願いしてみたら譲っていただくことができました。
運命的と言ったのは、その貸してくれた人も、僕に楽器を渡すときに「この楽器とはこれでお別れかもしれない」と感じたらしいのです。


─それは確かに吉永さんのところに来る運命だったかもしれませんね。
アレキサンダーのエンブレムと各ロータリーキャップにはご自身の手で青い宝石が埋め込んである
アレキサンダーのエンブレムと各ロータリーキャップにはご自身の手で青い宝石が埋め込んである
そんなこんなで、ここ最近はこの103を使う機会も多いです。「吹きにくいなあ」という感想は変わらないんですが(笑)、最近は自分が慣れてきました。
アレキサンダー、特に103のいいところは、クルスペと比べて息の量が少なくて済むことです。私の使っているクルスペの半分と言ってもいいくらい。それから音色の変化が付けやすいということでしょうか。逆にクルスペはどの楽器にもない独特の柔らかい音色を持っていますが、アレキサンダーのようなブラッシーな音を出すことは難しいんです。
でもどの楽器を吹いても、結局は私の音が出ているのだと思います。


一問一答コーナー

─ホルン以外の趣味は?
ゴルフとか野球とかと言ってみたいですけどねえ(笑)。なかなか時間が取れなくて。強いていうならば「子育て」でしょうか。もうすぐ1歳になる子供がいまして。子供大好きなんですよ。

─趣味とまで行かなくても、何かお好きなことは?
食べることが好きですね。特に何をということはなくて、美味しいものなら何でも食べます。

─お酒は飲まれますか?
飲みますが、お酒を飲むことに執着心はありません。食べることには執着心がありますので、飲み会は大好きですが(笑)。

─小さい頃車が好きだったとおっしゃっていましたが?
特に車そのものにこだわりはありませんが、運転することは今も好きです。仕事の移動ももっぱら車ですね。満員電車より渋滞の方がいいです。

─今一番したいことは?
ボーっとすることでしょうか。いろいろなことに時間を取られることが多いので、無の状態でのんびりしたい、というのはありますね。あと気分転換に釣りをやってみたいですね。自然の中でボーっとできるからいいなあと(笑)。

当コーナーの情報はそれぞれ掲載時のものです。
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