アレキサンダーファン
2005年01月掲載
ホルン・ワンポイントレッスン 達人の息吹


 達人の息吹 第3回

 アレキサンダーホルンオーナーズクラブのみなさん
明けましておめでとうございます。

昨年の、というか年越しコンサートだから今年にかけてというか、この間の紅白歌合戦やってる頃、僕は上野の文化会館でベートーヴェンのマラソンコンサートなるものに出演しておりました。一晩で1番から第九までやってしまうという神をも恐れぬ無謀な企画、つい年越しの餅代欲しさに引き受けてしまった。アレキサンダーアンサンブルの練習中、仲間に言われてふと冷静になって考えてみると、ホントに吹けるのかー?岩城さんずっと指揮台に立っていられるのかー?まぁ1アシにT橋君がついてくれてるからだいじょうぶかな?たぶんだいじょうぶ、だいじょうぶだと思う、だいじょうぶかも知れない・・・。どうせみんなプライドとかKー1とか、もしかしたら紅白とかに気を取られて聴きに来ないかも知れないし、途中で眠くなって大半のお客は寝てるだろうとか、自分に言い聞かせていた。ところがどっこい、ケーブルテレビが生中継する、って?いうじゃな〜い。マジ?というような状況下でステージにいたのでありました。東京ではめずらしく大晦日に結構な雪が降ったにもかかわらず、お客さん満員御礼、熱気ムンムン。みなさん、先は長いんですから、寝てて下さって結構ですよ。とでも言いたかったが、お客さん、聴く気マンマンといった感じで2番のシンフォニーは緊張のしっぱなしでした。ま、それでも明けない夜はない。時間とともにシンフォニーは日めくりカレンダーのように過ぎていきました。そして第九が終わった瞬間、内容はともかく人間やればできるんだという、なにかいつもとは違った妙な達成感に包まれたのでした。マラソンやる人にはランナーズ・ハイという現象があるらしいですが、まさに第九の最中は脳内エンドルフィンが多量に分泌されていたのでは?と思わせる元気のよさ。

というわけで今回のテーマは「スタミナ」です。

クリニックとかレッスンでも、しょっちゅう聞かれるのが「高音どうやったらでるんですか?」とこの「スタミナをつけるにはどうすればいいんですか?」。10人いたら8人か9人はこう聞いてきます。そんなのこっちが聞きたいわい。と思ってるんですが、ま、仕事ですからつっけんどんにもできないし。で、答えはとにかく吹くこと。これしかないんですね。やっぱり。朝起きたらまず通勤通学前に1時間基礎練習。その為には5時起きが基本です。お昼ごはんを10分で済ませ4、50分ロングトーン。仕事、授業が終わったら基礎練2時間、その後コープラッシュ上下巻を通し練習。その頃には空が暗くなっているでしょうから夕飯。デザートを食べ終わり一息ついたあとワーグナーあるいはシュトラウスのオペラパート、マーラー、ブルックナーの交響曲をさらいまくる。そうこうしているうちに日付けが変わって就寝。これを毎日続けたら1年後のあなたはマーラー交響曲全曲一晩マラソンコンサートの出演も可能でしょう。もしくは廃人のようになっているかどちらかです。

ホルンにそんな時間はかけられないという人のために。

休暇旅行中とかホルンが満足に吹けない日々が続くような時、ホルンを持たないである程度(ある程度、ですよ。)口の周りの筋肉をキープする方法を僕は実践しています。スタミナに一番関係している筋肉は口角から目の下にかけて斜めに存在する、ナントカ筋です。名前は知りません。知っている人は教えて下さい。そこを鍛えるわけです。その方法はいたって簡単。口を真一文字にぎゅっと結ぶようにします。口を閉じて上唇を下方に、下唇を上方に持っていくようにするわけです。この動作を10秒間続けた後10秒休み。このクールを3クール×5回で合計5分間。
5分後には上述のナントカ筋が疲れてきているのがわかるはずです。これを何セットかやっておけば、休み明けのあなたもスタミナの減少が軽減されていることでしょう。これならあなたがデスクワークをやっている時にもあくびをしない限りできるでしょう?

どうですか?ただしさっきも書きましたがこれは苦肉の策の最後の手段。やっぱり普段からエチュードなどをさらって口を鍛えること。コープラッシュやミュラーなどを丹念にさらうことによってほんとうのスタミナがついてきます。あー、やっとワンポイントレッスンらしい結びの言葉が書けた。それではみなさん今年もどうぞよろしくお願いします。あ、それと2月3日アレキサンダーホルンアンサンブルジャパンのコンサートもありますよ。なんと調子に乗ってCDも出しちゃたのでみなさん買ってくださいね。


PROFILE

今井仁志(いまいひとし) ●今井仁志(いまいひとし)
愛媛県出身。東京学芸大学音楽科卒業。ホルンを千葉馨、伊藤栄一、原田晃祝、デール・クレヴェンジャー、エリック・ティルヴィリガーの各氏に師事。
アフィニス文化財団海外派遣制度によりミュンヘンに留学。
オーケストラアンサンブル金沢、東京交響楽団首席奏者を経て、現在、NHK交響楽団団員。
桐朋学園音楽科講師、武蔵野音楽大学講師、日本ホルン協会常任理事。
アレキサンダーホルンアンサンブルジャパンメンバー。







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