今から100年以上も前の1909年、マインツ中央駅に程近いバーンホフ通り9番地に構えられ、同年のモデル103誕生とそれに続く数々の栄光の歴史を形作ってきたアレキサンダー社の工房。この3月、慣れ親しんだ地を離れ、約5キロ離れた同マインツ市内への工房移転が行われました。そしてその新工房の開設を記念したレセプションが去る4月9日に華々しく開催。この晴れの舞台に日本からアレキサンダーホルンオーナーズクラブの会員4名が参加してきました。そして翌日にはアレキサンダー社フィリップ社長やスタッフらとのアクティビティ。今回はその充実のマインツ滞在の模様をレポートします。
皆さん、この日のためにそれぞれが長距離を移動しての参加となりました。ドキドキしながらアレキサンダー社営業部長ハンス・ヘルマンさんの運転する車に揺られること約10分。辿り着いた新工房は桜が美しく咲き誇る、空気も綺麗でなんだかとても心地良い雰囲気の場所にありました。
到着後、まずはフィリップ・アレキサンダー社長とご対面。日本から来た我々を温かく迎えてくださいました。そしてレセプションでの記念演奏のために、この日ベルリンから何と車で駆け付けられたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の4名、シュテファン・ドールさん、ファーガス・マクウィリアムさん、クラウス・ヴァレンドルフさん、そしてサラ・ウィリスさんともご対面。出演前の楽屋までお邪魔してしまいました。楽屋にはドールさんの愛犬ラッキー君も居て、とても和やかな雰囲気。ラッキー君はドールさんの言うことを良く聞くワンちゃんで、ドールさん曰く「この子は絶対に噛まないよ」とのことでしたが、誰に対してもフレンドリーに接してくれる本当に良い子でした。ホルンカルテットの皆さんは、レセプション後にはオーストリア・ザルツブルグまで、再び車で移動するという強行スケジュール。そんな中、本番前の楽屋でも笑顔を絶やさず対応してくださったドールさん達、本当にありがとうございました!
出席者数総勢150名強が駆け付けたこの日のレセプション。日本からはアレキサンダーホルンの総輸入発売元ヤマハミュージックトレーディング株式会社(当時)のスタッフや東京・渋谷のホルン専門店ネロ楽器の吉田社長らも出席。そして、現在ドイツに留学中の読売日本交響楽団の伴野涼介さんや、なんと往年の名ホルン奏者へルマン・バウマン氏の姿も!各界から大変多くの方達が出席されていました。
フィリップ社長のスピーチからレセプションが始まり、フィリップ社長はその冒頭でマインツまで訪れた我々を最初に紹介してくださるという心意気。非常に感激しました。フィリップ社長に続く地元名士らのスピーチの後はお待ちかね、ベルリンフィル・ホルンカルテットによる記念演奏♪新工房内の大広間的な空間にとても多くの人達が駆け付けたため、多少デッドな環境だったものの、伸びやかで艶やかなとても美しいアレキサンダーサウンドをしっかりと堪能させていただきました。大きな拍手で一度退席した後が圧巻。再び登場したカルテットはAHOC会員向けの特別サービス、地下鉄ポルカ“東京Version”まで披露してくださいました。まさかコレをドイツで聴けるとは!!ヴァレンドルフさんが東京の地下鉄駅名を早口で歌い上げ、ドイツ人にとってもその言葉の響きが面白いのか一同大爆笑。大賑わいの後、ベルリンフィル・ホルンカルテットによる記念演奏は幕を閉じました。
レセプション終了後は念願の新工房見学。アレキサンダー社ライモンド・パンクラッツさんのガイドにより新しくなった工房を隅々まで見学させていただきました。
Musik-Alexanderと言う名で経営する楽器店の裏手に併設される形で長年存在していた旧工房。時代や音楽家が求めるニーズに応えるため、過去100年に渡り増改築を繰り返して来た結果、これ以上の増改築が難しくなり、また年々高まるユーザーからの品質面への要求に応えるには、より設備の整った環境で製造を行うことがベストとの判断により、今回の移転に至ったそうです。
新工房は旧工房に比べ約3倍のスペースを有し、使用した水の出来る限りの再利用を可能とする浄水処理設備、常に新鮮な空気が全室に行き渡る空気循環システムなどの最新システムを導入、環境にも工員にも優しい作りが施されていました。しかし、基本的には旧工房と同じ機材、工具を同じ工員が操り、家庭的な雰囲気の中、旧工房となんら変わらぬ姿で楽器製造を行っている姿がとても印象的。フィリップ社長によれば、今回の工房移転の目的は楽器の増産にあるのではなく、全体的な品質の向上と安定的な商品供給体制の構築にあるとのこと。今回見学させていただいた限りでは、旧工房の歴史と伝統をしっかりと受け継ぎ、それを未来へと継承するための環境が十二分に整えられており、さすがはアレキサンダー社と言ったところ。1909年にマインツ中央駅そばのバーンホフ通りに工房を構えてから約100年、この新しい地で新たなる歴史を形作って行くことは間違いないでしょう。
と、ちょっとマジメな話になってしまいましたが、最新鋭の設備と旧工房の歴史と伝統とが絶妙に組み合わされた、とても充実した新工房。私達の愛する『アレキサンダー』はこれからもずっと変わらずに居てくれる、そんな安心感を抱かされる訪問となりました。
前日の興奮冷めやらぬ中、迎えた4月10日の日曜日。この日はアレキサンダー社スタッフとのアクティビティです。毎度お馴染みのセールス担当ライモンド・パンクラッツさん、そして徒弟として数年の修業後、セールスチームに1年半前から加わった美男子キャスパー・ケルコフさんのふたりが、朝10時に私達をピックアップしてくれました。
まず午前中は現地日本人ガイド寺尾さんの案内により、マインツの中心地を約2時間半に渡り徒歩にて散策。活版印刷の発明者として知られるグーテンベルグに関する資料が展示される博物館では、パンクラッツさんとAHOC会員、兼田さんの息のあった(?)共同作業で当時の印刷技術を再現。大聖堂ではちょうどミサが執り行われていて、大聖堂に響き渡るパイプオルガンの荘厳な響きに感銘を受け、旧市街では古き良き街並みを堪能、アレキサンダー社のあるマインツと言う街をより深く知ることの出来た、とても良い機会となりました。
市内のビール醸造所兼レストラン“Eisgrub-Brau”にて昼間からビールを片手に伝統的なドイツ料理のランチをお腹いっぱいに詰め込んだ後、フィリップ社長とご夫人、そして愛娘ステラちゃんの3名も合流。フィリップ社長とパンクラッツさんの車に分乗し、ライン川沿いのラインガウ地方をドライブ。広大なワイン用のブドウ畑で有名なヨハニスベルク、2006年10月の工房訪問ツアーでも訪れた魔女伝説の残る地ローレライ、そして道中パンクラッツさんの自宅にも少しだけ立ち寄るなど数々の名所(!?)をまわりました。
この日のディナーはフィリップ社長の住む村から程近い夕日の綺麗なレストラン。フィリップ社長ご家族も自宅から自転車に乗って良く来る人気のレストランらしく、どんどんお客さんが入って来て店内はいつの間にか満席。とても良い雰囲気の中、優雅なディナーとなりました。1日の中にマインツ市内観光、近郊地へのエクスカーションとたくさんの内容を詰め込んだため、少し疲れはあったのかもしれませんが、参加した会員にとっては日常では体験出来ない、とても思い出深い1日となったに違いありません。
4月9日、10日の2日間、ベルリンフィル・ホルンカルテットも駆け付けたアレキサンダー社新工房開設記念レセプション、そしてアレキサンダー社スタッフとのアクティビティと内容豊富な本当に充実の2日間でした。参加された4名の皆さんも心からこの機会を楽しまれたのではないかと思います。アレキサンダーホルンオーナーズクラブでは今後も会員の皆さんに楽しんでいただけるようなイベントを企画、開催していきたいと考えています。今回参加が難しかった方々も次回イベント開催時には是非ともご参加いただければと思います。
最後に、今回参加された皆さんよりコメントをいただきましたので掲載致します。
山田 幸子さん
兼田 昇さん
巽朋子さん
島 紗耶加さん
アレキサンダーホルンオーナーズクラブ事務局